大家の私が一番危険?
アパートなどの不動産は管理が大変なため、他の相続人は嫌がり、祖父が持っていた賃貸アパートは孫の私が相続した。
相続したアパートは築年数が古く、住人は高齢者が多い。住人が部屋を退去する時には鍵を返してもらうのだが、新しい住人にその鍵は渡さない。
新しい住人が安心して暮らせるよう玄関の鍵は毎回変える、そのため、祖父の金庫には使わなくなった古い鍵が沢山残されていた。
なぜ、祖父は使えなくなったカギを処分せずに残したのだろう?
築年数が古く、相続したアパートには最新の設備は何もない、エアコンも付いてない、風呂とトイレは別ではない、しかし、交換する鍵だけは毎回セキュリティーの高い最新なモノ。
親族は築年数の古いアパートに最新の鍵は勿体ないと言っているが、祖父は聞く耳を持たなかった。
祖父の金庫に沢山残っていたカギ、これらのカギには住人の思い出が詰まっており、カギが戻って来たのは住人が無事に過ごせた証。
業者に任せられるほど家賃収入は多くないため、アパートの掃除は大家が自ら行わなくてはならない。
祖父に代わって私がアパートを掃除していると、住人から「何歳になった?」と聞かれた。
その住民は古くからアパートに住んでおり、幼かった私が祖父の後に付いて掃除をしていたのを知っており、私がアパートを相続したことを話すと、「君が相続したなら、お爺さんは喜んでいるよ」と言ってくれた。
その住民は高齢のため入院することが多く、そのため、祖父の金庫には使われなくなったカギばかりではなく、現住人が使っているカギのスペアキーも金庫に保管されていた。
大家の祖父が住人からスペアキーを預かるのは、住人に万が一のことがあった時のために。
スペアキーを使って悪用可能なため、スペアキーを預かるのは住人から信頼されている証。
長年高齢者ばかり住んでいるアパートに、若い女が入居することになった。
私は祖父を見習い玄関のカギを最新のものに交換するのだが、新しく入居するのは若い女、従来の回して開けるタイプのカギだけではなく、暗証番号を入力しないとドアは開けられないカギに交換した。
私はまだ若く、スペアキーだけでドアを開けられる鍵では、過ちを起こさない自信は無かったのだから、お金が高くついたのは仕方がない。